昨年10月以降、東京都のカスハラ防止対策検討部会が計4回開催され、企業の具体的な問題と共に、多角的にカスハラを審議しました。カスハラ対策として、統一基準の必要性や企業の法的責任が強調され、企業は従業員保護と加害予防の両立が求められます。
1. 昨年10月31日に、東京都が主催するカスタマーハラスメント(カスハラ)防止対策に関する検討部会が初めて開催された。
2. 検討部会は、東京商工会議所や日本労働組合総連合会東京都連合会などの関係者と大学の専門家を交え、カスハラ問題を多角的に審議している。
3. 専門家は、不当な金銭要求や長時間の業務妨害などの具体例を挙げ、カスハラに対する一貫した判断基準の必要性を強調している。
4. カスハラ防止条例が施行されると、企業の法的責任が厳しくなり、使用者責任や従業員の安全配慮義務が求められる。
5. 企業は従業員への教育と周知を強化し、カスハラの被害者を守ると同時に、加害者にならないよう二重の対策が求められる。
昨年10月31日、東京都が主催するカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)防止対策に関する検討部会が初めて開催されました。以降、12月22日、翌年の2月6日、そして今年の4月22日に計4回の会合が行われてきました。この検討部会には、東京商工会議所、東京都商工会連合会、一般社団法人東京経営者協会、日本労働組合総連合会東京都連合会などの関係者のほか、大学の専門家も参加してカスハラ問題を多角的に審議しました。
東京商工会議所からは、企業が直面する具体的な問題や困難が報告されました。これに基づいて専門家は、カスハラに対する判断基準のばらつきが問題であると指摘しています。関西大学の池内教授は、カスハラの基準として、例えば不当な金銭要求、暴力や脅迫、長時間にわたる業務妨害などの具体例を挙げて、正当なクレームと悪質なハラスメントを区別するための一貫した基準の必要性を強調しました。
現行の刑法では、カスハラ行為が脅迫罪(刑法第222条)、名誉毀損罪(刑法第230条)、傷害罪(刑法第204条)などに該当する場合、法的に訴追することが可能です。しかし、実務経験者からは、カスハラの対応においては現場の慣れが生じやすく、問題が深刻化しやすいという声も上がっています。また、カスハラ行為には個人の感じ方が大きく影響するため、共通の基準を設けることは依然として難しい課題となっています。
カスハラ防止条例の施行により、企業は法的責任が一層厳しく問われることになります。例えば、企業の従業員がカスハラ加害者となった場合、民法第715条に基づく使用者責任が適用され、企業も賠償責任を負う可能性があります。そのため、従業員への教育や周知が欠かせません。
また、労働契約法第5条により、企業が従業員の安全に配慮する義務を怠った場合、労災が認定され、損害賠償を求められるリスクも増大しています。企業にとっては、カスハラの被害者となる従業員を保護しつつ、加害者となるリスクも予防するための二重の対策が求められます。
さらに、カスハラが頻繁に発生すれば、企業の評判にも悪影響を及ぼし、誤解や不信感を招く可能性があります。そのため、企業はカスハラ対策を継続的に強化し、従業員と顧客双方に安心と信頼を提供する努力が求められます。